Visual imagination-今日、何を観ましたか?

Vol.1【漢字を観る。漢字文化は絵解きから始まった。】

(Evelyn ChaiによるPixabayからの画像)

日本人ならば必ず身に着け、毎日何かしら目にしたり書いたりしている「漢字」。

日本のみならず中国や韓国など、いわゆる「漢字文化圏」であれば、発音は違っていても、漢字そのものに共通した意味を見出せます。

普段は「文字」として認識している漢字ではありますが、実は「意味」を形に置き換えて表した文字、表意文字と言われています。つまり、象形文字のように、表したいものの形が変容してできた文字なのです。

書き取りで一生懸命覚えた漢字も、少し見方を変えれば奥深い世界が観えてきます。


【最初は「絵」だった漢字の歴史】

あまりにも日常にあふれていて、その存在も意識していない漢字。先ずはその歴を紐解いてみましょう。

中国における文字の発祥は、黄帝の代に漢字を発明したと言われる伝説的人物倉頡(そうけつ)が、砂浜を歩いた鳥の足跡から鳥の種類が分かるように、概念も見ることによって表現できると気づいて作った文字とされています。つまり、考えていることを絵にして、それを伝達方法として用いることが出来る考えたのですね。

そういう意味では、漢字は象形文字などと同じく、「意味」を形や絵に置き換えて表した文字が集まってできています。そして、その文字の一つ一つに意味があるため、表意文字と定義され、そのため、ある文字を一つ見るだけで伝えたいことが理解できるようになっています。

現在漢字は、中国・台湾・日本・韓国・シンガポールなどで、文字表記の手段として使用されています。しかし、近年各国の政策により、漢字自体を簡略化したり、使用の制限などが行われたため。現在ではこれらの国で完全に文字体系を共有しているわけではありません。また、日本語では仮名、韓国ではハングルと、漢字以外の文字との併用もされています。ただし韓国では、現在漢字はほとんど用いられなくなっているようです。


■日本語と漢字

日本語における文字の使用は、一般に5世紀から6世紀頃、漢字が本格的に輸入されたことにより始まりました。古典で有名な「万葉仮名」は、漢字を日本語の音に表記するために利用したとされています。

3世紀から5世紀には日中両国で漢字が日本に入っていたことは確かであると言う説があり、『後漢書』や『倭人伝』などにある日中の外交記述からみても、遅くとも2、3世紀には支配者層における文字の使用を想定する方が自然であるとの意見もあります。

一方で東日本では、平安時代前期に至っても使用される漢字は限られていたようで、古代の漢字の普及には、著しい地域偏差が存在していたことも確認されています。

平安時代初期に平仮名が、漢字の一部を元に片仮名が作られたとされています。

【漢字の形は彩をも示す。漢字圏に共通した文字の魅力】

漢字の魅力とは何でしょうか?

良く「書」の展覧会や、俳句の色紙などを観て「綺麗な字」とか「達筆」などと感想を言いますが、文字が綺麗とは、どんな文字のことを言うのでしょうか?

漢字の魅力はまずそこにあります。つまり、デザイン性に優れているというところなのです。綺麗に字を書くというのは、絵を描くように全体のバランスが良いということなのでしょう。「漢字の形は彩(あやどり)を表す」と言った人がいますが、正にその通り。

中国の漢詩などを見れば、縦横のバランスを考えた漢字が選ばれていることも分かります。そういう意味ではグラフィックデザインの元祖なのかもしれません。


■利便性にも優れている漢字。

一文字の中に詰まっている情報量が濃密なのも漢字の特徴です。

それは漢字を目にした時、見た側の経験値などにもよりますが、たった一文字からでも想像力が刺激されて絵が思い浮かぶの文字は、恐らく漢字だけかもしれません。

もちろん、アルファベットも使う単語から絵が想像できないわけではありません。単語の意味がわかれば自然と映像は思い起こされます。

しかし、アルファベットはそもそも一文字が「音」を持っている音価を表記する音素文字であるため、漢字のように、一つ一つの文字を絵としては認識出来ません。声に出せば単語の形が出来るのが音素文字です。

そういう意味では、個人の違いはあれば、漢字の中には「書けなくても読める」と言う単語があるのでは無いでしょうか?

何故書けないのに、その漢字の意味が認識されるのか。それは、日本人が漢字を「絵」として捉えているからです。例えばトイレに「男」「女」とどこかに表記されていてば、間違いなく入れますよね。これが中国であっても、韓国であっても、男女の漢字がどこかにあれば、どちらに入ればよいのか日本人は間違わずに済みます。これが漢字の利便性なのです。


【視覚で想像する漢字の形。「部首」とその意味を知ろう】

漢字を扱う国であれば、たとえ発音はできなくても大抵の意味がわかります。

漢字は単体のものを合わせて読むものもあり、代表的なのが「部首」です。

「しんにょう」「がんだれ」など、聞いたことがあるでしょう。例えば「糸編(いとへん)」の漢字を観ると、「綿、絹、編む」など、パッと見て、「糸」を扱った切れや布を表すことがわかります。人によっては、その漢字を見るだけで色まで想像できる人もいるでしょう。それが漢字の面白さでもあります。ここではいくつか代表的なものをご紹介しましょう。


①えんがまえ

漢字の上部を四角く囲むような部首で、「遠く離れた行き止まり」の意味があります。

使用される漢字は「岡」「内」「両」「向」などにその部首が含まれています。


②うかんむり

文字通り、「う」に似た形をしています。文字の上にあることから「冠」の名前がついたのでしょう。「山の形をした屋根」を意味する部首ですが、使用される漢字には御馴染みのものも多くあります。「宇」「家」「宙」「宝」「字」などです。


③ころもへん

その名の通り、「衣装」を表す文字ですが、由来が面白く、「衣」と言う漢字は元々は象形文字で、その形が「襟もとを合わせた衣」を意味していました。そういわれてみれば、漢字の形から着物の合わせも想像できます。「袖」「襟」など、文字の左側にあるものと「表」「袋」「裏」などのように下にある場合もあります。


④しめすへん

こちらも部首としてはメジャーですが、ころもへんと形が似ているので、間違えることもあるかもしれません。「しめすへん」は、元々は「示」という漢字が部首として使われていました。それが時代に合わせて次第に「ネ」に変化したため、二通りの部首が使用されるようになっています。由来に関しては「神様」に関わる言葉を漢字で表すようになったのが始まりだと言われています。「祇」「祠」「禅」など、神事にまつわる漢字が多くあります。


⑤とりへん

部首は全部で11画までありますが、その11画がこの「とりへん」です。動物の「鳥」を部首として使用したもので、やはり「鳥」にまつわる漢字に多く使用されます。

「嶋」「鵙」「鴕」などですが、もう一つ「酉」も「とりへん」と呼ばれる部首で、「成熟意味する」ということで、発酵して作られるものに使用されます。「酒」「酔」「酵」などです。


【視覚を育てた漢字文化】

quillauによるPixabayからの画像)

全てを語りつくすには、あまりにも膨大な情報と歴史を持っている漢字。

それは突き詰めれば言語や文化に発展し、それぞれの国の生きざまにも繋がっていく、壮大なロマンです。

特にアジアの国では、母国語として誰しもがいつの間にか身に着け、死ぬまで使っていく漢字。しかし本当の意味を理解し、その形を見て楽しむことが出来れば、奥深い世界を知ることが出来ます。

そういう意味では、いつの間にか「見て」読んでいる漢字ですが、その歴史は必ず「視覚」の成長と共にあったのかもしれません。例えば「しめすへん」のように、時代ごとに形が変化したものは、それを「見る目」が変化した可能性もあるからです。

昔覚えた漢字を今度は逆に、絵にしてみてはいかがでしょう。「漢字の形は彩を表す」と言う言葉通り、小学生の自分と現在の自分が過ごしてきた時間にタイムトラベリングが出来るかもしれません。漢字の長い歴史は読む方にあるからこそ、見えてくる景色があるのです。


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